ライフハックの小山龍介氏が語る「今」を生き抜くコツ 人生100年時代を生き抜くための「自分OSアップデート」~ロジカルシンキングが通用しない時代に、ビジネスパーソンがすべきこと~

先の見通しが極めて困難な「VUCA」(※)の時代。世の中が指数関数的に変化する中、人生100年時代をいかに輝き続けるか。ビジネスパーソンにとって、避けて通れない課題だ。 そこで今回、『IDEA HACKS!』『TIME HACKS!』などハックシリーズの著者である小山龍介氏に協力いただき、ビジネスパーソンの「社会生存能力」についてアンケートを実施した。その結果を踏まえた解説と共に、コンセプトクリエイター、大学准教授、学生、アーティストといった多様な顔を持ち多忙な日々をおくる小山氏に、今の時代を生き抜くコツを伺った。※:ブーカ、予測不能な状態を指す


株式会社ブルームコンセプト 代表取締役
名古屋商科大学ビジネススクール 准教授 小山龍介(こやま りゅうすけ)
京都大学文学部哲学科美学美術史卒業。大手広告代理店勤務を経て、サンダーバード国際経営大学院でMBAを取得。卒業後、松竹株式会社新規事業プロデューサーとして歌舞伎をテーマに広告メディア事業、また兼務した松竹芸能株式会社事業開発室長として動画事業を立ち上げた。2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立し、現職。2018年京都造形芸術大学大学院MFA(芸術学修士)取得。
コンセプトクリエイターとして、新規事業、新商品などの企画立案に携わり、さまざまな商品、事業を世に送り出す。メンバーの自発性を引き出しながら商品・事業を生み出す、確度の高いイノベーションプロセスに定評がある。
翻訳を手がけた『ビジネスモデル・ジェネレーション』に基づくビジネスモデル構築ワークショップを実施、ビジネスモデル・キャンバスは多くの企業で新商品、新規事業を考えるためのフレームワークとして採用されている。
著書に『IDEA HACKS!』『TIME HACKS!』などのハックシリーズ。訳書に『ビジネスモデル・ジェネレーション』など。最新刊は『仕事のスピードを上げながら質を高める 最強のライフハック100』

ライフハックとは、仕事や生活を効率良く進めるためのコツ

──小山さんは、様々な肩書をお持ちですね。まずはそれぞれどのようなことをしていらっしゃるのか教えてください。

小山龍介氏(以下、小山) メインは、新規事業や新商品開発のコンサルティングです。ワークショップなどを開催し、そこから出てきたアイデアをもとにした事業創造や、商品を開発する支援をしています。
次に、日本遺産プロデューサーです。文化庁のプロジェクトで日本遺産という制度があり、その補助金が支給された自治体にアドバイスを行っています。また、地域活性化の一環として、自社事業として沖縄の焼き物“やちむん”などの雑貨を販売する「ニライカナイ自由が丘」という小売店を運営しています。

3つ目は、名古屋商科大学ビジネススクール准教授。ビジネスモデルを教えています。さらに学生という顔もあって、京都造形大学の博士課程でアートを研究しています。最近、フォトグラファーとしての活動も始めました。他にも、バンドや能も続けています。稼ぎ頭は冒頭に挙げたコンサルティングですが、すべて本気で取り組んでいます。

──限られた時間の中で、小山さんは様々なことに打ち込んでいらっしゃるのですね。多忙な中で「ライフハック」が重要になってくるのだと思いますが、まず小山さんとライフハックとの出会いを教えてください。


小山 MBA取得のためアメリカに留学していた際、シリコンバレーの企業で4カ月ほどインターンとして働いていました。そこで様々な人に話を聞いてみたところ、日本企業とは働き方が全く異なることに気が付きました。シリコンバレーでは、ダラダラ仕事をせず集中する時間と休息する時間をうまく使い分けている人が多いのです。新卒で入社した広告代理店では、長時間労働が当たり前でしたから驚きました。そして、これからは彼らのような仕事の仕方をしなければならないと思ったのです。

その頃アメリカで注目を集めていたのが、「ライフハック」でした。ライフハックとは、仕事や生活を効率良く変えていくためのコツです。これを、日本でも紹介したいと考えました。

──そもそも、「ハック」とはどのような意味なのでしょうか。

小山 IT系の「ハッキング」のイメージから悪い意味で使われがちですが、「ハック」の語源は“その場にあるもので問題を効率良く解決すること”です。例えば、キャンプで椅子がないから、切り株を椅子替わりにする。これもハッキングです。フランスの文化人類学者(クロード・)レヴィ=ストロースは、手元にあるモノを寄せ集めて新しいモノをつくることを「ブリコラージュ」と呼びました。これは、予め仕様を決めて設計をしてモノをつくるエンジニアリングとは対極にあるものです。ライフハックは、手元にある限られた資源で複雑な問題を解決する、まさに現代版ブリコラージュと言えます。

意識的な「締め切りの設定」で、仕事の効率と質を高める

──時間の使い方に悩みを抱えたビジネスマンに対して、「時間ハック」のアドバイスをいただけますでしょうか。

小山 「時間」とは、非常に重要な概念です。古くは、時間は誰に対しても等しく流れているというニュートンの「絶対時間」が常識とされていました。しかし、19世紀の終わり頃、フランスの哲学者アンリ・ベルクソンは、時間というのは人や状況によって感じ方が異なると主張しました。さらにマルティン・ハイデッガー(編注:ドイツの哲学者)は著書『存在と時間』(1927年)で、「死」の先駆的決意性があるからこそ「生」を実感すると述べています。 この思想を時間ハックに置き換えて私が実践しているのが、締め切りを意識的に作っていくことです。漠然と時間を過ごすのではなく、アクティブに活動するためには、締め切りを設定して自分を追い込んでいく。すると、思いがけない発想が生まれたり、集中力が高まったりします。

──確かに、時間を区切ると効率は上がる気がします。しかし、締め切り直前になって焦って仕事に取り掛かると、仕事の質が下がらないでしょうか。

小山 そうした質の低下を防止するための折衷案が、「フロントローディング」という方法です。これは、初期段階にある程度負荷のかかる処理をして、最後に完成させること。例えば企画を考える時、最初にパッと思いついたもので6割~7割の状態にまで作っておきます。その状態で少し置いておき、締め切り間近に引き出し、ザっと仕上げる。この方法が、効率・質ともに最も高いことが分かりました。

──いっきに完成系までもっていくのではなく、途中で一度寝かせるということですね。


小山 途中まで仕込んでいることにより、寝かせている時間にも潜在的に思考は続き、自然と必要な情報が集まってきます。外山滋比古氏の『思考の整理学』(1983年)や、ジェームズ・ウェブ・ヤングの『アイデアのつくり方』(1940年)でも記されていることです。
これは先ほどお話したエンジニアリングとブリコラージュの話に通じるところがあります。完成形を予め定め、そこに向けてモノを作っていくエンジニアリングも重要ですが、自分が最初に想像した以

上のものはできません。それに対してブリコラージュは、手元にあるものを寄せ集めることで面白い化学反応が起き、自分が想像した以上のアウトプットが生まれるのです。日本企業は、与えられた課題を解決しながらモノを作ることは得意です。しかし、今の時代は、その課題を自分で見つけていくことが求められています。これまでとは全く異なる考え方、開発の仕方が必要です。

アンケート結果から紐解く「自分OSのアップデート」

──そこで必要なのが、最新刊『仕事のスピードを上げながら質を高める 最強のライフハック100』でも巻頭に書いていらっしゃる「自分OSのアップデート」ですね。

小山 1990年代~2000年代は、ロジカルシンキングが世の中を席捲しました。様々なところでロジカルシンキング講座が開講され、ロジックであらゆる課題が解決できると考えられていました。しかし、今はいくらロジカルに考えても答えが出ない時代です。世の中はロジカルシンキングの幻想から解放されつつあります。なぜなら、ある事象を取り巻く要素は複雑で、様々なものが絡み合っているからです。この絡み合いを、20世紀は「構造」と呼びました。様々な現象の構造を分析し、その構造から対象を捉える考え方で、これを(フェルディナン・ド・)ソシュールが言語学に適用しまし

た。それが様々な領域に派生し、(クロード・)レヴィ=ストロースは民俗学に、(ジャン・)ピアジェが認知心理学へ展開していきました。もはや“ロジカルシンキングOS”では対応できない世の中、従来の古いままのOSで世界を見るのではなく、新しい認識構造をインストールして、世の中の見方を変えていくことが必要となります。

──そのためには、何をすべきでしょうか。

小山 それを説明するために、今回実施したアンケートの結果について解説していきます。
まず、Q1『世の中で流行っているものをひとつあげて下さい。それはなぜ流行していると思いますか? あなたが考える理由を自由にお答えください。』について、様々な回答をしていただきました。約3割の人が回答したのが「SNS」で、その理由として「承認欲求」を挙げる人が多いようです。それは確かに頷けます。しかし、果たしてSNSの流行を承認欲求だけで説明すべきでしょうか。デバイスの発展や通信環境の革新によるメディア構造の変化といった視点からも、説明できるはずです。また、SNSに没頭してしまう時代背景を、社会環境や人間関係といった社会構造的な観点から見ることもできます。
自分OSアップデートの重要な点は、単純なロジックに当てはめるのではなく、まずは複雑なものを複雑なまま体感的に理解することです。そして次に、複雑なものを「構造」として捉えなおす。その時に、例えば虹を7色で見ていたが、それで足りないのであれば、12色、そしてさらに多くの色として認知する解像度を上げていくというプロセスが必要です。

なぜ流行していると思うか、その理由についてきいてみました。回答を抜粋してご案内します。

◆SNSについて(個別アプリ含む)
・自分の存在を明かさず、意見を公開できる。匿名性があり、自由気ままに意見が言える。
・自分自身のつぶやきからスタートするが、自分の意見に同調する人、反論する人、良くも悪くも関心度数がわかる。
・人々が暇すぎるのもあるのでは・・・

◆スマートフォン、スマホゲーム
・とにかく「スマホ」。全てはこれに始まって、これで完結していく。
・スマホゲーム。電車に乗ると、多くがゲームに熱中している。ポケモンGoは道路上、レイドバトル場に人が集まっている。
・はやる理由は、特に若い人の「個」に落ちたこと。PCは設定含め大袈裟になってしまった。TVさえも。

◆サラリーマン的ライフスタイルの変化
・サラリーマンのリュックサック。スーツやシャツも伝統的な枠組みが徐々に壊されてきて機能性重視となってきた一環だと思う。いままでのビジネスファッションは服に自分を合わせている部分もあったと思うが、それが変化してきているのではないだろうか。
・サラリーマンの副業解禁。多様化の一旦とか、いろいろ言われているが、要は、掛け持ちしないと、食っていけない。
・シェアオフィス、会社よりもリラックスし集中できそうだから。チャットツールなどコミュニケーションツールも発達しているので、場所に縛られない働き方ができるようになった。

◆AIについて
・当然の技術的革新と捉えられているから。人材の供給不足も補える。
・AIとロボットの事業拡大。人間ができる作業を効率よく進めるため各社が企画制作に励んでいるから。

◆IoTについて
・第四次産業革命等のトリガーがあり、世界的な技術競争が起きているため。
・データサイエンスとIot。実態はよくわからないが、メディアをはじめ色々な人が記事やコメントを見聞きしているから。是非論が横行しているから。

◆新しいマネー関連
・仮想通貨、様々なマーケットが関連しているから。
・住宅ローン崩壊低金利を謳い文句に、新築住宅の販売を促進してきたが、夫婦にトラブルが生じると、返済が途端に滞ることになり、ローン途中で手放すことになった。

◆流行しているミュージシャン
・USA(ダパンプ)幼稚園に通う娘も、小学校の二男も口ずさんでいる(TVばかり見せる家庭ではないにもかかわらず)
・米津玄師、ひきこもりだった隠れた才能が突然日の目を見た。

◆GAFA
・生活の中に入り込んでおり、使わずにいられないから。

◆ワイヤレスイヤホン
ワイヤレスイヤホン(中〜高価格)通勤時に利用している人が1年前と比較して明らかに増加しています。(中高生も利用)

──流行している理由も、多面的な意見が出てきましたね。

小山 様々な理由が回答されているように、事実には多面的な見方があり、何か1つが正しいということはありません。 Q2『事業を成功させるために、もっとも重要だと考えることをひとつ選んでください。』からも、そのことが言えます。ここでは選択肢を6つ挙げましたが、正解は1つではなく選択肢の全てが重要です。「強力な営業体制、ネットのSEO施策などの広報・販売チャネル」を選択した人はわずか3%でしたが、これもネット企業やメディアでは不可欠です。1つに偏らず6つの選択肢すべてに目を配り、全体の構造を見ておくことが大切だと言えます。 自分OSのアップデートとは、個人が多様な観点から物事を見られる状態になることです。Q1 でお話した、SNSの流行を多面的に捉えることと同じように、これら6つの観点からビジネスという現象を構造として捉えることができます。

──Q3 『好きなことをし続けると、いつしかスキルやキャリアの強みに変わり、その強みがさらに強くなっていくという好循環があります。あなたにとって、そうした好循環はありますか?』の質問には、どのような狙いがあったのでしょうか。

小山 これも、自分OSアップデートの話です。構造主義では、なぜその構造ができたのか、その構造が将来どう変化するのかについて、説明しきれていませんでした。例えば言葉が時代によって変化するように、構造は一定ではなく変わっていきます。“ポスト構造主義”と言われる流れです。
ここでもう1つ重要な自分OSアップデートは、「構造を動態的に見る」ということ。これを分かりやすく理解する観点が「好循環」です。例えば、スポーツでチームが勝つとメンバーの関係性が良くなり、思考の質と行動の質が高まり、さらに良い結果が生まれる。これが好循環です。一方でその逆の悪循環もあります。同じメンバーであってもチームの構造は一定ではなく、生き物のように変化していくのです。良いリーダーに必要な資質とは、そのチームの循環をコントロールできることです。
これを個人に置き換えると、好循環を自分の中でいかに生み出していくかが、キャリア形成において重要になります。回答の中にある「不得手な業務も我慢してやり続けたら、いつの間にか得意分野になった」というのが、好循環です。私も、始めはクリエイターになりたくて広告代理店に就職しましたが、配属されたのは営業部でした。希望していない部署でしたが、やってみると面白く、そこからビジネスへの興味が湧き、現在のキャリアに繋がっています。自分という構造を捉え、良い方向に変化させる「自己強化ループ」を回すことが重要です。

──Q3では、実に5割以上が好きなことから生まれた好循環を「ある」と回答しています。私自身も好循環が「ある」のですが、自分OSをアップデートして、さらなる好循環につなげたいです。すぐにでも実践したいと思います。今日はありがとうございました。



ライフハックについて著した小山さんの著書
仕事のスピードを上げながら質を高める 最強のライフハック100
小山龍介(著)
SBクリエイティブ刊
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プロフィールPROFILE

株式会社ブルームコンセプト 代表取締役 名古屋商科大学ビジネススクール 准教授 小山龍介(こやま りゅうすけ)

京都大学文学部哲学科美学美術史卒業。大手広告代理店勤務を経て、サンダーバード国際経営大学院でMBAを取得。卒業後、松竹株式会社新規事業プロデューサーとして歌舞伎をテーマに広告メディア事業、また兼務した松竹芸能株式会社事業開発室長として動画事業を立ち上げた。2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立し、現職。2018年京都造形芸術大学大学院MFA(芸術学修士)取得。

 

コンセプトクリエイターとして、新規事業、新商品などの企画立案に携わり、さまざまな商品、事業を世に送り出す。メンバーの自発性を引き出しながら商品・事業を生み出す、確度の高いイノベーションプロセスに定評がある。翻訳を手がけた『ビジネスモデル・ジェネレーション』に基づくビジネスモデル構築ワークショップを実施、ビジネスモデル・キャンバスは多くの企業で新商品、新規事業を考えるためのフレームワークとして採用されている。

著書に『IDEA HACKS!』『TIME HACKS!』などのハックシリーズ。訳書に『ビジネスモデル・ジェネレーション』など。最新刊『仕事のスピードを上げながら質を高める 最強のライフハック100』

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