国内2 万人の男女を対象とした「幸福度を決定する要因についての調査」。所得や学歴より「自己決定」が幸福感に影響

独立行政法人経済産業研究所は、2018年2月、「生活環境と幸福感に関するインターネット調査」と題し、国内約2万人の男女を対象にアンケートを行った。その結果をもとに神戸大学 社会システムイノベーションセンターの西村和雄特命教授と、同志社大学経済学研究科の八木匡教授は、「幸福感と幸福感を説明する重要な要因」について分析した。

同調査は、配信数933,329件に対して33,598件の回答があった中から、さらに信頼性の高いデータのみを抽出し、20,005件を分析に用いた。なお、回答データは性別・年代・都道府県で人口構成比に合わせて割付回収している。

また分析に際し、オックスフォード式の心理的幸福感を測る質問を用い、所得、学歴、自己決定、健康、人間関係の5つについて幸福感と相関するかについて分析。加えて、政府機関にてしばしば用いられる主観的幸福感の調査も併せて行うことで、心理的幸福感の因子の信頼性を評価する参照指標とした。なお、本調査では、心理的幸福感の因子として2つの因子を抽出しており「前向き志向」、「不安感」と呼んでいる。

■年齢別「前向き志向」と「不安感」 

【前向き志向】
・<20歳〜34歳>…0.055ポイント
・<35歳〜49歳>…-0.080ポイント
・<50歳〜>…0.034ポイント
(右数値は幸福感)

【不安感】
・<20歳〜34歳>…0.098ポイント
・<35歳〜49歳>…0.113ポイント
・<50歳〜>…-0.148ポイント
(右数値は幸福感)

「前向き志向」については、20~34歳で0.055だったが、35~49歳では-0.080 へと低下し、50歳以上で 0.034 へと上昇している。「不安感」は、20~34歳の 0.098 から35~49 歳の0.113へと上昇し、50歳以上の-0.148 へと低下している。

結果から、幸福感が若い時期と老年期において高く中年期で低い、また不安感はその逆で中年期に高く、若い時期と老年期に低いという結果となり、中年期に人生に何かしらの躓きを感じていることがうかがえ、調査でも「一般的に知られている結果と整合的である」と見解を述べている。

それを裏付けるのが、年齢別の「主観的幸福感」の結果だ。

■年齢別「主観的幸福感」

・<20歳〜34歳>…6.9ポイント
・<35歳〜49歳>…6.77ポイント
・<50歳〜>…7.34ポイント
(右数値は幸福感)

人が感じる主観的幸福感の度合いを年齢別にグラフにすると、人生の始まりと終わりでは高く、中年期で落ち込む「U字型曲線」を描くという結果は、先の調査と同じであった。ここに示されるように主観的幸福感が働き盛りと呼ばれる35〜49歳に下がっていることが分かる。

■世帯年収階級別「主観的幸福感の所得弾力性」

・<550万円>→0.078ポイント
・<850万円>→0.124ポイント
・<1,100万円>→0.178ポイント
・<1,600万円>→0.089ポイント
(左数値は所得階級、右数値は幸福感)

ここでは「幸福感」の変化率と「所得変化率」の比率を各所得階級ごとに計算し、「幸福感の所得弾力性」の変化を求めている。変化率の比は1,100万円で最大となるが、より多い1,600万円では低かった。この結果から、所得は主観的幸福感に影響するが、比例的に増加するわけではないことが分かる。

■「主観的幸福感」を決定する要因の重要度

・学歴…0.015ポイント
・世帯年収額…0.091ポイント
・自己決定指標…0.13ポイント
(右数値は幸福感)(なお学歴は説明変数として統計的に有意ではない。)

これは主観的幸福感決定要因として「学歴」、「所得」、「自己決定」の3つに焦点を当て、その標準化係数を比較したものである(因みに、これら3つを上回る幸福感を決定する要因としては、「健康」、「人間関係」がある)。

これらが示しているように、「自己決定」は、「所得」や「学歴」よりも強い影響を持っている。つまり、自ら選んだ道を進む人ほど、より高い主観的幸福感を持っているというわけである。こうした結果は、前向きであるほど幸福度が高いという、前向き志向の分析結果とほぼ一致している。

自分で人生の選択をすることで、選択する行動への動機付けが高まる。そして満足度も高まる。そのことが幸福感を高めることにつながっていると見られる。

レポートでは、最後に国連の「世界幸福度報告書」での、国際ランキングについて触れ「日本は幸福度がさほど高くなく、特に国全体で見ると、『人生の選択の自由』の変数の値が低い国であった。そのような日本社会で、『自己決定度の高い人が、幸福度が高い傾向にあること』は注目に値する」と述べている。

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