「同一労働同一賃金」、2019年10月時点で9割以上の法人が対応未完了

株式会社Works Human Intelligenceは2019年12月、「同一労働同一賃金対応状況調査アンケート」の結果を発表した。サービス業や電子機器業、小売など30業種の大手法人を対象とし、2019年10月15日~11月15日に実施。結果から、ほとんどの企業で施行開始までになんらかの対応は計画している一方、まだ具体的な施策実施には至っていないことが明らかになった。

同一労働同一賃金の対応状況。対応完了の法人はごくわずか

働き方改革の一環として、2020年4月に施行が予定されている「同一労働同一賃金」(パートタイム・有期雇用労働法)。大手法人に開始に向けた対応状況について尋ねると、「対応完了」はわずか4%に留まった。一方、「具体的施策検討中」(60%)、「情報収集中」(33%)を合わせると90%以上。ほとんどの大手法人が、まだ対応を完了できていないという結果となった。




対応完了予定は施行開始直前の「2020年3月中」が6割超

「同一労働同一賃金」実施に向けた対応をまだ完了していない企業に、完了予定時期について質問したところ、62%が「2020年3月までに完了予定」と回答。施行開始となる4月の直前まで対応を完了させること目指している法人が過半数を超えた。前の設問でも現時点で「情報収集中」、「施策を検討中」という回答が9割以上だったことを鑑みても、多くの法人で制度への対応が遅れている実情がうかがえる。




正社員とパートタイム労働者間の待遇差は「各種手当」

「同一労働同一賃金」の実現にあたっては、正規・非正規の雇用形態に関わらず均等・均衡待遇を確保するための策定が必要となる。施工前の現状では、正社員(無期雇用フルタイム労働者)とパートタイムや有期雇用といった非正規雇用労働者の間に、どのような待遇差が発生しているかを調査した。


待遇を「基本給」、「賞与」、「教育訓練」、「各種手当」、「福利厚生」の5項目に分け、非正規雇用労働者の中でも「パートタイム」と「有期雇用」の2種類の働き方に従事している人と正社員をそれぞれ比較し、待遇差があるかないかをきいた。


まず、パートタイム労働者と正社員の待遇差についての調査では、「基本給」と「教育訓練」の2項目について、「不合理な待遇差はない」との回答が80%を上回った。一方、「各種手当」については、今後の見直し予定の有無にかかわらず「不合理な待遇差がある」が合計50%。「待遇差はない」と同数ではあるが、比較的多い結果となった。




正社員と有期雇用労働者との待遇差も「各種手当」。見直しは計画しているものの

次に正社員と有期雇用労働者の比較についての回答を見ると、前の設問で見たパートタイム労働者との比較と同様、「基本給」と「教育訓練」に待遇差はないが「各種手当」には差を認識している(合計53%)という傾向が分かる。


また、この「各種手当」への待遇差については、正社員の待遇を引き下げるのではなく、「非正規雇用労働者側の待遇」や「制度や支給基準全体」への見直しを計画している法人が多いことも分かった。





派遣労働者と正社員に待遇差が発生していないのは、派遣元事業主の存在が要因

続いて、一部の例外を除き有期雇用にあてまる「派遣労働者」と正社員の待遇差についても尋ねた。すると、5つすべての項目において「不合理な待遇差はない」と回答する企業が過半数にのぼる結果となった。有期雇用の中でも「派遣労働」という形態では、今回のような労働者にかかわる新制度への対応は派遣元となっている事業主がおこなうため、アンケート対象となった派遣先の企業が早急に対応をとる必要はないことが、要因のひとつだろう。また、派遣労働者の待遇について「見直しを図る」と回答した法人もあるが、対応は派遣元と協議しながら進めるとしている。




「同一労働同一賃金」実現に向けて取り組むべき課題とは

最後に、本制度に対応するために今後取り組むべき課題は何かを質問したところ、最も多かった回答は「職務定義の細分化」で63%。次いで「社員の理解促進」(38%)、「非正規雇用労働者の賃金の引き上げ」(28%)が続いた。




これまで、日本企業がおこなってきた採用のスタンダードは総合職としての人材を集めることだったため、職務定義が曖昧なままになっていた。そのため、「同一労働同一賃金」への対応を契機に、職務定義の見直しもはかろうとしている大手法人が多いようだ。「同一労働同一賃金」の施行開始まで4ヵ月。企業には、具体的な対応についてますます検討を重ねるとともに、働き方改革についても一層の推進を期待したい。


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