増加する学びたいミドルたち。90%のミドルが「リカレント教育を受けたい」と回答する訳とは

人材採用・入社後活躍サービスを提供するエン・ジャパン株式会社は、2018年2月、リカレント教育についてのアンケート調査(2018年1月4日~1月31日、同社運営「ミドルの転職」ユーザー2,240人対象)の結果を発表した。

同調査によって、多くのミドルがリカレント教育に興味を持っていることが明らかになり、一時的な社会的注目度だけでなく、現場においてもリカレント教育へのニーズが高まっていることが表れた形となった。結果を踏まえ、日本におけるミドルのリカレント教育について考察しよう。

注目されるリカレント教育

「リカレント教育」とは、学校教育を終えた社会人が、大学などの教育機関に戻り、学生として再教育を受ける教育システムを意味する。1970年代にスウェーデンの経済学者によって提唱された生涯教育の構想で、経済協力開発機構(OECD)で取り上げられたことから国際的に知られるようになった。

欧米でのリカレント教育への取り組みは、国によって状況が異なるものの、比較的キャリアアップのために労働者が学び直しをするシステムは受け入れられやすい環境にある。日本においては、これまでの長期雇用の慣行もあって、馴染みにくいところがあった。

しかし、ベストセラーのアンドリュー・スコット著『ライフ・シフト』にあるように、人生100年時代が到来しようとしている今、社会と人生の関係に大きな変化が起こっている。テクノロジーの発展を背景に、社会が急速に変化する中、既存の知識やスキルは古くなり、使えなくなる。そこで求められるのが、新しい知識へのアップデートだ。

安倍内閣が掲げた「人づくり革命」においても、学び直しによって国民一人ひとりの能力が向上し、誰もが就業機会と教育機会を均等に得られ、またできるだけ長く働けるようにするための施策として、リカレント教育が注目されている。

「リカレント教育を受けたい」は90%。将来を見据えたスキルにニーズ

同調査によると、回答者の90%が「今後リカレント教育を受けたい」と回答している。

また、「今後リカレント教育を受けたい」という回答者に対する「何を学びたいか」の問いには、「英語などの語学力」(58%)、「経営・ビジネスに必要な知識や能力」(57%)、「専門的な資格の取得」(48%)といった回答が上位を占めた。

株式会社リクルートマーケティングパートナーズが2017年に実施した「人気おケイコランキング」調査でも、ミドル・シニアともに「英語」が圧倒的な人気。仕事やキャリアに関る目的での習い事や資格取得講座に注目が集まっていることがわかる。

リカレント教育を受ける上では、学費や費用の負担が壁に

リカレント教育へのニーズは高いものの、教育を受ける上での壁も存在している。同調査の結果の中で、ミドルのリカレント教育を妨げる要因は、「学費や受講料の負担が大きい」(73%)、「勤務時間が長くて十分な時間がない」(48%)となっている。

しかし、近年では政府によるリカレント教育への経済的支援が充実してきている。例えば、専門実践教育訓練給付金制度では、在職者、または離職後1年以内(出産・育児などで対象期間が延長された場合は最大4年以内)の者が、厚生労働大臣が指定するプログラムによる教育訓練を受ける場合に、ハローワークから、訓練費用の一定割合が支給される。さらに、教育訓練修了後1年以内に、目標設定した資格を取得して就職し、雇用保険の被保険者となると、給付金が上乗せされて再計算され、既支給分の差額が支給される。

2018年1月からは、支給割合が教育訓練経費の40%から50%、年間上限額も32万円から40万円へと拡充している。これにより、資格取得後に就職後した場合に再計算される給付金の額は、教育訓練経費の70%(年間上限56万円)になり、差額が追加で支給される。つまり、条件を満たせば、教育訓練の費用負担を30%に抑えられ、大幅な負担減を実現できるようになったということだ。

さらに2016年から始まっている働き方改革の流れで、長時間労働が是正されることにより時間的に余裕が生まれれば、学ぶ時間も確保できるようになるだろう。

調査に寄せられたミドルたちの声からは、「実社会で通用する経営能力をつけ、社会的な課題の解決と自身の豊かさを同時に実現したい」「学び直しをすることで、よりアカデミックに裏付けられた業務に移行したい」など、リカレント教育を通してスキルアップして、自己実現を目指したいという強い想いが見てとれる。

少子高齢化が進み、2025年問題が差し迫る中、人材不足、介護離職の増加など人事に関る問題との直面が予測される日本。若手の人材育成も重要だが、現実に今働いているミドルより上の年齢層の人材育成はさらに重要になる。国や企業の存続のためにも、経済的支援の拡充など、学ぶ意欲があるミドルが安心してリカレント教育を受けられる環境を整える取り組みが求められる。

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